ヒルマ・アフ・クリント展
東京近代美術館にて開催中の『ヒルマ・アフ・クリント展』2025年3月4日〜6月15日
一生涯の作品が展示されている、アジア初の大規模展覧会です。
『ヒルマ・アフ・クリント展』は、今年見るべき展覧会の一つだと思います。
スウェーデン生まれの、ヒルマ・アフ・クリント(1862-1944)
私はすっかりヒルマさん作品の虜になりました。
『フェミニズムと映像表現』の展覧会も同時開催中です。
ヒルマさんご自身が女性である故に、遅れて世の中に評価されたことは、フェニミズムの問題提起にもなる史実でしょう。
美術の基礎教育
ヒルマ・アフ・クリントは、貴族の家に生まれ、美術教育を受けました。
王立芸術アカデミー在学中には、人体を骨の構造まで解体して、描写しています。
具象表現の基礎を身に付け、アカデミー卒業後は、職業画家としてのキャリアを順調にスタートさせました。
17歳の頃から神秘思想やスピリチュアリズムに興味のあったヒルマさんは、神智学協会に所属しました。
※神智学
神秘的霊知によって神を認識できると説く信仰。
東西の諸宗教を結び付け、瞑想や交霊によって神の真理を目指すことを理想としていました。
5人
その頃の作品には、親しかった5人の女性グループの交霊会に降りてきた霊的存在から送られたメッセージによる自動書記や自動描画によって記録していたものも含まれます。
作者名は「5人」として出展されていました。
スケッチブック↑ とグラファイト・紙にドライパステルで描かれた作品↓
今後のヒルマの作画に現れるモチーフが既に描かれており、このスピリチュアル体験はヒルマさんのアーティシズムに大きく影響している出来事であることがわかります。
『原初の混沌、WU』は、「神殿のための絵画」の最初の連作
作品内にも記されるWUは、ヒルマさんにとって、特に重要な意味を持つ文字でした。
彼女が文字に付与する意味は多義的ですが、
W・・・物質
U・・・精神
の意味を付与しました。
物質と精神の合一、あるいは進化のしるしともされました。
彼女は、青色に女性性、黄色に男性性を付与しましたが、それは時に交替する流動的なものでした。
全体としては、善と悪、女性異性と、男性性など、人間性に引き裂かれた力を結びつけ、世界の始まりにあった単一性を再び実現するという、世界の誕生についての神智学的教えがテーマになります。
『原初の混沌、WU/薔薇シリーズ、グループ1』(1906-07年制作)
『WU/薔薇シリーズ、グループ3』(1907年制作9
青(女性性)、黄色(男性性)、ピンク色(愛)
を表しているそうです。
神殿のための絵画とは、ヒルマさんが、全作品を収める建築物を構想していたことに由来する
WUSに付与した意味には「人間性の7つの構成部分」「物質への降下による経験の強化」などが含まれます。
進化と言うタイトルは、チャールズ・ダーウィンの種の期限、出版後、半世紀を経た、当時もまだ盛んに議論されていた進化論への関心も伺わせます。
しかし、ヒルマさんにとっての進化とは、魂が高次の段階へと上昇し、神に近づく精神的なプロセスであるという神智学的思想を経由するものでした。
冒頭で、モンドリアン、カンディンスキーに先駆けて抽象絵画を創案した画家と説明されているとおりです。
『10の最大物、グループⅣ』
「楽園のように美しい10枚の絵画」を制作する啓示を1907年8月に受け、
10月2日に制作を開始しました。
わずか2ヶ月のうちに、高さ約3.2メートル、幅約2.4メートルの巨大な絵10点を仕上げました。
ヒルマさんは、神智学などを通して輪廻転生にも親しんでいました。